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この回の数字
※ 数字は動画公開時点の公表値です。統計や計画は更新されるため、最新値は各公表元でご確認ください。
① 完成予想図ではなく、お金の出どころで読む
大きな更地の読み方は、2通りある
大きな更地の話には、たいてい二通りの読み方がある。ひとつは完成予想図を見る読み方。にぎわいがあって、緑があって、光っている。もうひとつは、お金の出どころを見る読み方だ。誰が持ち、誰に渡し、費用は誰が払うのか。
完成予想図は、まだ決まっていないことまで描ける。契約書は、決まったことしか書けない。夢洲についていえば、いま公表されている資料のうち、確実に効いてくるのは後者のほうである。
「万博のあとは何も残らない」「カジノの街になるだけだ」。どちらの言い方も半分は当たっていて、残りの半分は契約書のかたちに書いてある。以下、その3枚を順に見ていく。
② 同じ島に、3つの区画と3つの契約
夢洲は、ひとかたまりの土地ではない
夢洲は大阪湾岸の人工島で、いま大きく3つに分かれている。南側がIRの用地で約49ヘクタール。その北側、万博の会場だった場所が第2期区域で約42ヘクタール。そして北東の端に、記念公園と保存される大屋根リングが残る。
区画ごとに扱いが違う、というだけの話に見えるかもしれない。だが土地の処分方法が違うということは、お金の入り方と出方がまるごと違うということでもある。ここが今回の入口になる。
③ 1枚目 — 49ヘクタールを、35年貸す契約
もう結ばれている、唯一の契約書
1枚目はすでに結ばれている。大阪市が持つ約49ヘクタールを、35年間貸すという契約だ。賃料は年およそ25億円。面積で割ると月額1㎡あたり428円という計算になり、物価スライドを除けば固定である。土地は2025年10月1日に事業者へ引き渡された。
その上に建つのは、初期投資およそ1兆2,700億円(税抜)とされる施設で、うち建設関連が約9,600億円。開業目標は2030年の秋ごろとされている。
※ 初期投資額は資料と時点によって幅がある。区域整備計画・実施状況報告書ベースでは約1兆2,700億円(税抜)、その後の増額を反映した報道では約1兆5,130億円とされる。金額を引用するときは、どの時点の数字かを添えたほうがいい。
賃料が安すぎるのではないか——そう感じた人もいると思う。実際、この点は裁判になっている。土地の不動産鑑定の方法をめぐって住民訴訟が複数、審理中で、「安すぎる」とする原告側の主張と「適正な鑑定に基づく」とする大阪市側の説明が対立している。係争中の事柄なので、当サイトはどちらが正しいという書き方はしない。
もうひとつ、よくある疑問。「万博で黒字が出たなら、それを使えばいいのでは」。ここも財布が別である。万博を運営したのは博覧会協会という組織で、土地を持っているのは大阪市。EP01で見た最大370億円の剰余金は協会の側の話で、そのまま土地の整備費になるわけではない。
④ 2枚目 — 地主のほうが、お金を払う契約
賃料の約31年分にあたる、上限788億円
2枚目は、少し変わっている。大阪市がお金を受け取る側ではなく、払う側になっているからだ。土地課題対策費として、上限788億円を負担することが債務負担行為として決められている。
土地課題、つまり地面そのものの問題である。夢洲はごみと土で海を埋めて作った人工島で、柔らかい地面は建物の重さで沈み、揺れれば液状化も起きる。だから建てる前に地面を固める工事が必要になる。その費用を、借りる側ではなく貸す側が持つという形になっている。
家を貸すときに、大家のほうが床の張り替えまで持つ。普通の貸し借りとは、順番が逆になっている。
賃料は年25億円、地面の対策費は上限788億円。単純に割れば、賃料のおよそ31年分。35年の契約期間とほぼ同じ長さになる。もっとも、対策費は「上限」であって実際の執行額ではないので、確定した損得としては読まないほうがいい。数字の並びとして、そう見えるという話である。
⑤ 3枚目 — 42ヘクタールを売る契約は、まだ白紙
決まるのは2027年2月、契約は2031年2月が目標
3枚目は、まだこの世に存在しない。第2期区域と呼ばれる民間開発のエリア、約42ヘクタールである。ここは貸すのではなく、売るとされている。
| 売却対象 | 約42ha(420,062㎡)。ほかに貸付対象 約0.4ha |
|---|---|
| 方式 | 公募型プロポーザル(二段階審査)。2026年7月3日に募集を発表 |
| 売却予定価格 | 2026年9月14日(月)公表予定 |
| 参加資格審査 | 2026年8月5日 〜 2027年1月8日 |
| 提案書類の受付 | 2027年1月12日 〜 15日 |
| 審査 | 計画提案審査 2027年2月上旬 → 価格提案審査 2027年2月17日 |
| 土地売買契約 | 2031年2月の締結を目標 |
先に選ばれている陣営が2つある。2025年1月に優秀提案者として選定された大林組を代表企業とする陣営と、関電不動産開発を代表企業とする陣営だ。この2つが開発案の共同検討を始めたことが2026年6月に報じられている(報道ベース)。
投資規模は1兆円級になるとみられる、という報道もある。ただし事業者は決まっておらず、この数字は確定ではない。サーキット場・アリーナ・ウォーターパークといった施設名も出てくるが、いずれも提案の段階で、決まったものとしては紹介できない。マスタープランVer.3.0が示しているのは「MICE・観光・商業・居住が融合する複合都市拠点」という方向性までである。
⑥ 貸すと売るが、逆転している
この回のいちばんの「へえ」
普通、地主が土地を手放したくないときは貸す。これから価値が上がると思うから、持ち続けるわけだ。逆に売るのは、お金を先に受け取りたいときである。
夢洲では、それが場所によって分かれている。IRの土地は35年かけて少しずつ回収し、第2期は売って一度で回収する。しかも貸しているほうでは、地主の側が地面を固める費用を持つ。手離れのいいはずの「売る」と、手間のかかる「貸す」が、期待とは逆の順番で並んでいるように見える。
ここからは、あくまで一つの見方として書く。売るという選び方は、街になるまでの時間を短くしたいときの選び方だと思う。買った側は代金を回収するために、早く何かを建てる必要が出てくるからだ。ただしこれは資料に書かれた理由ではなく、契約のかたちからの推測にすぎない(未確認)。
⑦ 万博が置いていったもの — 駅と、200メートルのリング
地面が費用を決める島で、更地に駅がある強さ
どちらの契約にも、同じ請求書がついてくる。地面だ。実は地下鉄も同じ請求書を受け取っていて、コスモスクエアから夢洲までの3.2kmの延伸では、工事費が当初の見込みより129億円増えた。理由のひとつが、想定を超えた地盤沈下と地下障害物の掘削である。埋立地の値段は、上に建つ物より地面が決めている面がある。この話は EP05「大阪海抜ゼロメートル地帯」 と地続きだ。
それでもこの島は、万博の前より貸しやすく、売りやすい土地になった。理由ははっきりしている。駅ができたからだ。2025年1月19日にOsaka Metro中央線が夢洲まで延び、駅が開業した。施設は大阪港トランスポートシステム(OTS)が保有し、Osaka Metroが第2種鉄道事業者として運行している。更地に駅がある、というのは不動産としてかなり強い条件である。万博は、その駅と道路を島に置いていったことになる。
もうひとつ置いていったのが、大屋根リングだ。北東部の約200メートルが保存され、記念公園・記念館と一体で整備される。保存期間はおよそ20年とされる。残りは2027年8月までに解体される予定で、2026年6月17日時点では保存部以外の約9割がすでに解体済みと報じられた。
半年の会期のために何年もかけて作られたものが、それより短い時間で姿を消していく。その一部だけが、島に残る展望台として次の30年に引き継がれる——というのが、いま公表されている計画の姿である。
動画では言い切らなかったこと
確定していない部分を、確定していないまま置いておく
売却予定価格と坪単価は、動画の時点では非公表だった。公募前だったためで、大阪市は2026年9月14日に公表する予定としている。金額が出るまでは「42ヘクタールがいくらで売れるのか」に答えは書けない。
第2期の投資規模「1兆円級」は報道ベースである。事業者が決まっていない段階の見立てで、確定した数字ではない。2陣営が合流すれば夢洲全体で2.5兆円級という試算も出ているが、これも同じ扱いになる。
記念館の事業費と運営主体は未確定。大阪市が公表しているのは基本計画の策定業務の委託費上限9,460万円で、これは施設の総事業費ではない。
IRの契約期間には表記のゆれがある。報道によって35年と33年の両方が出てくる。当サイトは公表資料に沿って35年と書いているが、契約期間の細部までは踏み込まない(未確認)。
万博の剰余金を跡地整備に充てられるかどうかは、一次情報で確認できていない。剰余金の使途としてリング保存が挙がっているという報道はあるが、第2期区域の整備費との関係は未確認のままにしておく。
賃料と鑑定の妥当性については、結論を書かない。住民訴訟が複数、審理中である。どちらが正しいかは裁判所が決めることで、記事の役割はそこではない。
2026年9月時点の続報
動画公開(2026年8月24日)の前後で動いたこと
第2期区域:2026年7月3日に大阪市港湾局が事業者募集を報道発表。参加資格審査の申請受付は8月5日開始、売却予定価格は9月14日(月)公表予定(大阪市 実施要領)。
応募の動き:優秀提案者だった関電不動産開発陣営(京阪ホールディングス・住友商事などが参画)と大林組陣営が、開発案の共同検討を始めたと報じられている(2026年6月・報道ベース)。
記念公園・展望台:2026年7月24日、大阪市都市計画局が約2.9haの記念公園ゾーン(展望台化する約200mのリング+延床約3,000㎡の記念館)の基本計画策定業務を公募。2026年9月下旬に事業者選定の予定で、10月下旬に事業構想案、12月中旬に基本計画案という工程が示されている。
マスタープラン:Ver.3.0が2026年6月19日に正式策定され、北東200mリングの展望台化が明記された。
リング解体:保存部以外は2026年6月17日時点で約9割が解体済み。撤去完了は2027年8月までの予定。
足まわりの次:JRゆめ咲線の延伸(桜島〜夢洲 約6km・地下)は、2026年5月の社長会見で「2030年代後半を目標」とされた。建設費は約2,850億〜3,000億円超と報じられている(日経 2026年2月)。距離は約5kmとする報道もあり、数字には幅がある。
IR:2025年4月からの基礎・杭工事が進み、2026年後半から2027年にかけて本格的な建築段階に入る見通し(ニッキン)。2026年夏時点の詳細な進捗は確認できていない。
出典・参考
数字は下記の公表資料・報道から。リンクは別タブで開きます
- 大阪府・大阪市「夢洲第2期区域まちづくりの方針(マスタープラン)Ver.3.0」副首都推進本部会議 資料3(PDF)
- 大阪市 港湾局「夢洲第2期区域 開発事業者の募集」(2026年7月3日)
- 観光庁「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画 実施状況評価書」(PDF)
- Osaka Metro「中央線延伸部(コスモスクエア〜夢洲)開業」ニュースリリース
- Osaka IR Review「万博跡地『夢洲第2期区域』の開発事業者公募」
- 日経クロステック「大屋根リング200m残置と記念館・公園整備に現実味」
※ 本文中の図解は、上記の公表資料をもとに大阪探検隊が再構成したものです。制度・計画・統計は更新されるため、最新値は各公表元でご確認ください。
よくある質問
万博の跡地は、売るのですか、貸すのですか?
万博会場だった第2期区域 約42ha(420,062㎡)は売却されます。大阪市は2026年7月3日に開発事業者の募集を発表し、参加資格審査の申請受付は8月5日から。売却予定価格は2026年9月14日に公表予定で、計画提案の審査が2027年2月上旬、価格提案の審査が2027年2月17日の予定です。土地売買契約の締結は2031年2月が目標とされています。
なぜIRの土地だけ「貸す」のですか?
IR用地 約49haは事業用定期借地として35年間貸し出され、賃料は年およそ25億円(月額1㎡あたり428円)です。売り切らずに35年かけて回収する形になっています。加えて大阪市は、地盤の対策など「土地課題対策費」を上限788億円まで負担することが決まっています。この賃料と不動産鑑定の妥当性をめぐっては住民訴訟が審理中で、当サイトはどちらが正しいかの判断はしません。
大屋根リングは残るのですか?
北東部の約200mが保存され、記念公園・記念館と一体で整備される計画です。大阪市のマスタープランVer.3.0(2026年6月19日策定)には、この部分を展望台として改修する方針が明記されています。保存部以外は2027年8月までに解体される予定で、外した木材は能登の復興住宅や横浜の花博(GREEN×EXPO 2027)などで再利用されています。