COLUMN — ミャクミャク思い出話
あの夏、夢洲で出会った「ミャクミャク」
— 細胞と水からうまれた、ふしぎで愛おしい“いのち”の記録
赤い細胞に、青い水。目玉がいくつも増えたり減ったり——はじめて見たときは、正直、ちょっとびっくりした。それがミャクミャク。大阪・関西万博(EXPO 2025)の公式キャラクターだ。細胞と水がひとつになった不思議な姿は、見れば見るほど愛おしくなる。気づけば私たちは、会場のあちこちでミャクミャクを探していた。
ひと夏の、熱気。
あの夏は、とにかく暑かった。日傘の波、行列、そしてどこを向いてもスマホを構える人、人、人。ミャクミャク像の前は、いつも記念撮影の順番待ちだった。汗をぬぐいながら、それでもみんな笑っていた。「次わたしね」「はい、ピース!」——知らない人どうしも、ミャクミャクの前ではなんとなく和やかになる。そういう、ふしぎな力があった。
会場の、あちこちで。
ミャクミャクは一体だけじゃない。大屋根リングのそば、パビリオンの前、ホールの中——会場のあちこちに、少しずつ違う表情で立っていた。座っているもの、手を振るもの、夜には青く光るもの。広い夢洲を歩きながらミャクミャクを見つけるのは、それだけでちょっとした宝探しだった。
屋内の通路でばったり出会うと、なんだか「おかえり」と言われた気がした。等身大の像はどれも表情ゆたかで、近づくと細胞のひと粒ひと粒まで作り込まれているのがわかる。作り手の愛情が、そのまま伝わってくるようだった。
目玉の数だけ、ミャクミャクの表情があった。
同じ顔は、ひとつもない。
立ち姿、横顔、はにかんだ笑顔。同じキャラクターのはずなのに、置かれた場所と光で、まるで別の生きもののように見えた。撮った写真を後で見返すと、一枚ごとに少しずつ性格がちがう。それがうれしくて、つい何枚もシャッターを切ってしまった。
そして、夕暮れ。
日が傾くと、海辺のミャクミャクに灯がともる。オレンジに染まる空と、青く光る体。遠くにかすむ街のシルエット。万博は2025年10月13日に幕を閉じたけれど、この景色は、きっとずっと忘れない。ミャクミャクは大阪のあちこちへ旅立ち、これからも“いのちのかがやき”を伝えていく。
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