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この回の数字
※ 数字は動画公開時点の公表値です。統計や計画は更新されるため、最新値は各公表元でご確認ください。
① 138年の貨物駅が消えて、24haが空いた
梅田のど真ん中に、日本でもめずらしい「空白」が生まれた
グラングリーン大阪が建っている場所は、もともと梅田貨物駅だった。1874年の大阪駅開業を起点に発展した鉄道の荷物基地で、廃止されたのは2013年3月。138年分の歴史が終わり、梅田のど真ん中に約24ヘクタールの更地が生まれた(大阪市 うめきた2期区域まちづくり関連資料)。
その南半分が、2013年4月に開業したグランフロント大阪(約7ha)。開業初年度に5,300万人、10年で累計4.7億人という人出を記録した「うめきた1期」である。そして北側に残った最後のピースが、今日の主役グラングリーン大阪——うめきた2期だ。
2期の区域は約17ha、そのうち敷地は約9.1ha、総延床は約55.6万m²、最大高さ185m。事業者は三菱地所を代表とする9社のJV(大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、阪急電鉄、三菱地所レジデンス、うめきた開発特定目的会社)に、SANAAやGGNなど設計・運営6社が加わる構成である。
ここで最初の但し書きを置いておきたい。「約6,000億円」という金額は、1期にも2期にも使われる。報道でどちらも同じ丸め方をされるため、混ざりやすい。この記事で6,000億円と書くときは、すべて2期=グラングリーン大阪側の総事業費(報道ベース)を指す。「うめきたに1兆円」という数字を見かけたら、それは1期と2期の合算だと思ってよい。
② 開業3日で70万人、1年半で2,800万人
そして一番人気だったのは、お金のかからない場所だった
開業は二段構えだった。2024年9月6日に公園と北館が先行まちびらき(全体の約4割)、2025年3月21日に南館が開業して約7割が動き出す。南館開業初日は約15万人、3日間で延べ約70万人。開業半年で累計1,000万人に達し、先行まちびらきからの1年半で延べ約2,800万人が訪れた(三菱地所 2026年4月23日発表)。
オフィスも埋まった。総面積約11.1万m²のうち約85%が入居内定(2025年3月時点)で、クボタ・塩野義製薬・電通・富士通などが入る。日経は入居企業の時価総額合計が5兆円を超えると報じた。イノベーション拠点「JAM BASE」は1周年時点で参画300社超、内訳はスタートアップ33%・大企業30%・金融/VC17%。神戸大・大阪大・立命館大も拠点を置いている。
ところが、この街で一番人気の場所は入場無料の芝生だった。うめきた公園の芝生広場は人が集まりすぎて、芝を休ませる養生のために週に数日を目安に立入制限がかかる。ポケモンGOのスポット化で立入禁止区域に迷い込む人が出て、音声案内で対応した話まである。2025年秋冬のイルミネーションは約48万球で、過去最多規模だった。
ニューヨーク・タイムズ「2025年に行くべき52カ所」に大阪が38位で選ばれた際、理由のひとつに挙がったのもうめきた公園である(2025年1月)。6,000億円をかけた街で、看板になったのは無料の芝生だった。
③ 敷地の半分を、公園にした
4.5ヘクタール——東京ドームの建築面積とほぼ同じ
うめきた2期の敷地約9.1haのうち、都市公園「うめきた公園」は4.5ha。ほぼ半分である。地区全体では約8haの「みどり」を確保する方針が、2015年3月のまちづくり方針で決まっていた。
4.5haという広さは、東京ドームの建築面積(4.68ha)とほぼ同じ。甲子園球場(3.85ha)より一回り大きく、ニューヨークのブライアントパーク(3.9ha)を超える。URは「大規模ターミナル駅に直結した新設の都市公園として世界最大級」と表現している。もっとも、大阪城公園(106ha)と比べればその4%にすぎない。絶対値が大きいのではなく、場所が異常なのだ。
公園にした公式の理由は3つある。①大阪駅からの眺望価値をつくること、②大規模災害時の広域避難地を確保すること、③国際的に見て緑が足りないこと。②については、この公園が国の防災公園街区整備事業の枠組みで整備されている点が効いている。梅田で行き場を失った人が逃げ込める、都心のど真ん中の避難スペースでもある。
③の「緑が足りない」は、感覚の話ではなく点数の話だった。次の章で見る。
④ スコア21.7 — 一番緑のない大都市の、逆張り
足りないものを、一番目立つ場所に置いた
| ベルリン | 93.7 |
|---|---|
| ロンドン | 82.9 |
| ニューヨーク | 52.3 |
| 東京 | 36.4 |
| 大阪 | 21.7(主要都市で最下位クラス) |
森記念財団「世界の都市総合力ランキング2023」の緑地充実度スコア(UR・DBJのうめきた2期関連資料経由)を並べると、こうなる。大阪の21.7は東京(36.4)の6割、ベルリン(93.7)の4分の1以下。世界の主要都市のなかで、大阪は「一番緑のない大都市」のひとつだった。
その大阪が、日本有数の一等地の半分を空けた。一番足りないものを、一番目立つ場所に置く。グラングリーンの発想を一行で言うなら、これに尽きる。
一等地を空けるのは、我慢ではなく投資。——動画EP02のまとめから
⑤ 6,000億円と201億円、そして50年
民間のカネと公金が、どこで交わっているのか
開発全体の事業費は約6,000億円。手がけるのは三菱地所を代表とする民間9社の連合である。一方で、公園の「ベース」部分は大阪市とURが公金で整備した。防災公園街区整備事業としての事業費は約201億円。そこに民間側が上乗せ(アップグレード)を行い、完成後は大阪市に移管される。
面白いのはその先だ。市のものになった公園の管理は、開発した9社が設立した一般社団法人うめきたMMOが指定管理者として引き受ける。期間は2024年から2074年までの50年間。指定管理者の期間は通常3〜5年なので、これは相当な異例である。日々のランニング費用は大阪版BID制度(地権者の分担金を市が交付金として回す仕組み)で賄う設計になっている。
「街の価値は公園が育てる。だから自分たちで50年面倒を見る」。企業側がそう賭けている構図だ、と読むことはできる。ただし、指定管理料の金額と土地の取得価格は公表されておらず、賭け金の総額は外からは分からない(未確認)。
もうひとつ、公平のために。指定管理者を選んだときの市の審査評点は100点満点中77点だった。ただしこれは開業前の選定スコアであって、開業後の運営を採点した点数ではない。ここは混同されやすい。
⑥ 効いているのか — 地価と、試算の1.4兆円
上がっている数字と、まだ試算にすぎない数字を分ける
土地の値段は上がっている。御堂筋(北区角田町)の路線価は1m²あたり2,088万円で全国2位(2025年分・前年比+3.2%/国税庁)。梅田エリアの公示地価は平均1,027万円/m²、前年比+8.7%で府内の駅周辺1位——ただしこの+8.7%は民間集計をもとにした数字で、当サイトでは一次資料まで確認できていない(要一次確認)。動画で「9パーセント近く」と丸めているのはこの値である。
経済効果はどうか。URと日本政策投資銀行(DBJ)が2024年8月に示した試算では、年間639億円、2073年までの累計で1.4兆円。ほかに地価の押し上げ効果+3.4〜19.4%、健康増進による医療費削減 年8.3億円、ヒートアイランド面では熱排出のピークが通常のビル開発の4分の1、といった数字も並ぶ。
ただし、これらはすべて開業前の仮定にもとづく試算である。UR・DBJ自身が「確定した実績ではない」と明記している。上がった路線価は実績、1.4兆円は見積もり。読むときに分けておきたい。
⑦ 完成は2027年。40億円の住戸と、無料の芝生
この街の振れ幅が、そのまま梅田の振れ幅になる
グラングリーン大阪は、まだ完成していない。2026年11月20日に北側の「うめきたの森」が開園して全体の約9割が開業し、2027年春ごろにうめきた公園が全面開園して街全体が完成する予定である。全面まちびらきは2027年度、基盤整備の完了は2028年度とされている。
住宅の話は、この街の振れ幅をよく表している。北街区のTHE NORTH RESIDENCE(46階・484戸)は全戸完売。最高住戸は約305m²で25億円、発表時点で関西のマンション史上最高額だった。抽選倍率は高い住戸で80〜95倍と報じられている(出典によって幅がある)。入居開始は2026年3月。
南街区のTHE SOUTH RESIDENCE(45階・538戸)はさらに上を行く。最上階4戸は1戸387m²で40億円、関西最高額を更新する見込みだ。販売開始は2026年10月下旬予定、完成は2028年3月——つまり2027年度の「全面まちびらき」には、この棟は含まれない。
ホテルも揃った。南館パークタワーの28〜38階にはヒルトンの最上級ブランドウォルドーフ・アストリア大阪が日本初進出(2025年5月グランドオープン、252室)。北館にはキャノピー by ヒルトン大阪梅田(308室・2024年9月)、ホテル阪急グランレスパイア(482室・2025年3月)が入る。宿泊料の相場(平日1泊10万円〜、週末15万円〜+サービス料)は予約サイトから拾った推定で、公式の定価ではない。
無料の芝生の隣に、1戸40億円の住戸と日本初上陸のラグジュアリーホテルが並ぶ。この落差そのものが、いまの梅田である。周辺ではなにわ筋線(2031年春開業目標・総事業費6,500億円)の工事も進んでいて、うめきた地下駅とつながる。そちらは EP04 で扱っている。
動画では言い切らなかったこと
12分に入りきらなかった但し書きと、断定できない部分
「6,000億円」は、1期と2期で同じ丸め方をされる。グランフロント大阪(1期)も約6,000億円と報じられ、グラングリーン大阪(2期)も約6,000億円と報じられる。「うめきたに1兆円」という表現は、この2つを足したものだ。金額を引用するときは、どちらの6,000億円かを必ず添えたい。
経済効果1.4兆円は、実績ではない。UR・DBJの試算(2024年8月)は開業前の仮定に立つもので、2073年までという長い時間軸も置かれている。試算した当事者が「確定した実績ではない」と書いているのだから、引用する側もそのまま扱うのが筋である。
評点77点は、運営の評価ではない。指定管理者を選定したときの審査評点であって、開業後の運営を採点した数字ではない。「77点の運営」という読み方は誤りになる。
金額が公表されていないものがある。指定管理料の額と、民間側の土地取得価格は非公開。したがって「6,000億円のうちいくらが土地代か」は外から計算できない(未確認)。
オフィスの入居率は、最新値が取れていない。本文の約85%は2025年3月時点の「入居内定」の割合である。2026年8月25日時点でも募集中の区画が複数あることは確認できたが、そこから現在の入居率を逆算することはしない(未確認)。
倍率とホテル料金は幅がある。THE NORTH RESIDENCE の抽選倍率80〜95倍は出典によって差があり、ホテルの宿泊料は予約サイトから拾った推定値である。どちらも一次資料の確定値ではない。
2026年9月時点の続報
動画公開(2026年8月18日)のあと、確認できた動き
うめきたの森:大阪市の公表(2026年7月14日更新)では、11月20日開園で変更なし。ノースパークの開園区域を約0.9ha拡大し、公園の南北をつなぐ歩行者デッキ「ひらめきの道」が全面開通する。これにより有効避難スペースは約3.0ha→約3.7haに広がる。
公園の全面開園:うめきた公園の全体開園は2027年春ごろ。街区全体のまちびらきは2027年度、基盤整備の完了は2028年度(大阪市)。「2027年春=公園全体」と「2027年度=街全体」は別の話なので、混ぜないほうがいい。
働く人:阪急阪神不動産の発表(2026年6月10日)によると、南館を含む街区の就業者は2026年秋に1万人を超える見込み。これは入居率ではなく人数の見通しである。南館の「タイムアウトマーケット大阪」では飲食企画7件が進む。
来街者:公表されている最新値は先行まちびらき(2024年9月)から2026年4月までの累計約2,800万人のまま。2026年6〜8月分を加えた新しい数値は確認できていない(未確認)。
オフィス入居率:2026年6月以降に更新された公表値は見つからなかった(未確認)。
出典・参考
数字は下記の公表資料・報道から。リンクは別タブで開きます
- 大阪市「うめきた2期区域のまちづくり」
- 大阪市「うめきた公園(防災公園街区整備事業)」
- 大阪市「大阪市統計書」(梅田・うめきた関連の基礎データ)
- グラングリーン大阪(うめきた2期)公式サイト「事業概要」
- 三菱地所「グラングリーン大阪」ニュースリリース(2026年4月23日)
- UR都市機構・日本政策投資銀行 うめきた2期関連資料(緑の充実度・経済効果試算・PDF)
- 日本経済新聞「グラングリーン大阪 南館開業」(2025年3月)
- オリックス「JAM BASE 1周年」ニュースリリース(2025年7月30日)
- オリックス不動産 グラングリーン大阪 関連リリース(2025年4月)
- 日本政府観光局(JNTO)ニューヨーク・タイムズ「2025年に行くべき52カ所」に関する発表(2025年1月)
- 日経クロステック「うめきた2期 開発の全体像」
※ 本文中の図解は、上記の公表資料をもとに大阪探検隊が再構成したものです。制度・計画・統計は更新されるため、最新値は各公表元でご確認ください。
よくある質問
なぜ一等地の半分を公園にしたのですか?
公表されている理由は3つです。①大阪駅からの眺望価値をつくること、②大規模災害時の広域避難地を確保すること(国の防災公園街区整備事業として整備されています)、③国際的に見て緑が足りないこと。森記念財団「世界の都市総合力ランキング2023」の緑地充実度スコアで大阪は21.7と主要都市で最下位クラスでした(ベルリン93.7、東京36.4)。一番足りないものを一番目立つ場所に置いた、という構図です。
6,000億円は誰が払ったのですか?
街区の開発費 約6,000億円は、三菱地所を代表とする民間9社のJVが負担しています(2期=グラングリーン大阪の総事業費・報道ベース)。一方、うめきた公園のベース部分は大阪市とUR都市機構が公金で整備し、防災公園街区整備事業としての事業費は約201億円です。公園は完成後に大阪市へ移管され、管理は9社が設立した一般社団法人うめきたMMOが2024年から2074年までの50年間引き受けます(通常の指定管理は3〜5年)。
グラングリーン大阪はいつ完成しますか?
2026年11月20日に北側の「うめきたの森」が開園して全体の約9割が開業し、うめきた公園の全面開園は2027年春ごろ、街区全体のまちびらきは2027年度の予定です(大阪市・2026年7月14日更新)。基盤整備の完了は2028年度。なお南街区のタワーマンション THE SOUTH RESIDENCE の完成は2028年3月で、2027年度の全面まちびらきには含まれません。