ペルーパビリオン
「無限の可能性」
5000年の歴史が息づく、
南米の至宝を訪ねて。
会期中、「どこが良かった?」と聞かれるたび、少し考えてからこう答えていた。「ペルー館、行った?」。ひときわ長い行列、赤と白の外壁、そして扉の向こうで待っている5000年。日本からいちばん遠い国のひとつなのに、中に入ると、なぜか懐かしい。展示デザイン部門で金賞を獲ったあの空間の記憶を、薄れないうちに辿り直しておく。
マチュピチュの霧に包まれる
イマーシブ・ジャーニー
ハイライトは、壁面から床まで覆い尽くすイマーシブ映像だった。雲を突き抜けてマチュピチュの遺跡に降り、ナスカの地上絵をコンドルの高さから見下ろす。
没入型の映像体験というものは、それなりの数を見てきたつもりだった。でもここのそれは「観る」より「酔う」に近かった。標高3,400メートルの空気の薄さまで、再現されていた気がする。
時を越えて届く、古代の煌めき
映像の先には、5000年ぶんの実物たちが待っていた。シパン王の墓から出土した黄金装飾のレプリカ、繊細な文様の刻まれた陶器。
照明は控えめだ。それでも金は、暗がりのなかで自分の光り方をちゃんと知っている。ガラスケースの前に立つと、当時の人々の信仰や宇宙観が、説明文を読み終わる前に伝わってくる。5000年前のデザイナーと、目が合うような展示だった。
建築は、言葉よりも雄弁にその国を語る。ペルーの赤と白の壁面には、未来への希望が刻まれていた。
キッチンカーの誘惑
黄金のドリンク「インカコーラ」
展示を出た先の楽しみは、パビリオン横のキッチンカーだった。スパイスの匂いに混ざって、行き交う人がみんな同じ黄色い液体を手にしている。
ペルーの国民的炭酸「インカコーラ」である。色は蛍光イエロー、香りはバブルガム、味は——初めてなのに、どこかで飲んだことがある甘さ、としか言いようがない。正直に言うと、二口目から急においしくなる。
冷えたボトルを片手に、赤い壁を見上げる。それだけで、日本にいながらリマの午後だった。
Inca Kola Experience
黄金色に輝く、ペルーのソウルドリンク。万博の炎天下で飲むと、この甘さがちょうど正解になる。
無限の可能性を、その手に。
テーマは「Infinite Possibilities(無限の可能性)」。5000年の遺産を大切に守りながら、最新の映像技術と美食で世界を口説いてくる国。あの行列の長さは、口説き文句がちゃんと効いていた証拠だ。
閉幕とともに、あの赤い壁は役目を終えた。でも、マチュピチュの霧の冷たさとインカコーラの甘さは、来場者の数だけ持ち帰られている。可能性というものは、無限に配っても減らないらしい。
フォトギャラリー
パビリオン内外の記憶。キッチンカーやインカコーラも含め、あの日の空気をもう一度。タップまたはクリックで拡大表示できます。
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